インタビュー第 6 弾
順天堂大学大学院医学研究科 村山圭先生

「連携」することの大切さ

診療と研究に注力する医師の思い


先天代謝異常症の診療と研究において、長年の経験を持つ村山先生に、その道のりと現在の取り組み、患者会との連携について伺いました。

これまでのご経歴と、現在の取組を教えてください

20年間、千葉県こども病院で先天代謝異常の診療に携わり、ライソゾーム病、ミトコンドリア病、その他多くの先天代謝異常症の診療をしてきました。2023年7月からは、順天堂大学にてその活動範囲を広げています。主に、先天代謝異常症全般の診療、全国の患者さんや医師のサポート、スクリーニング検査、ミトコンドリア病の診療基盤や遺伝子診断の仕組みづくりなどに取り組んでいます。

研修医が終わる時、専門領域を決める中で、ほとんど診ている先生が少なかった先天代謝異常症に携わることになりました。
研究テーマは尿素サイクル異常症の中のオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症でした。ライソゾーム病やミトコンドリア病はあまり知られていない時代でした。

順天堂大学では浦安や静岡でも外来診療をしています。
先天代謝異常症外来ですが、おとなとこどもは半数ずつになります。
兵庫医科大学、北海道大学、聖マリアンナ医科大学でも外来診療をしています。
先天代謝異常症は専門家が少ないので、様々なところで患者さんを診たり、医療従事者のサポートをしています。
順天堂大学に来る前も、診療支援という形で多くの病院に行っていました。
先天代謝異常症を診る役割は、小児科医が担うことが多いです。
そこから内科医に渡す症例は限られています。
一般的に成人期の先天代謝異常症の患者さんを診療する先生は少ないです。
ただ、病気によっては、症状が関連する成人診療科の先生が関わっていただけるケースは徐々に増えて来ています。
私自身、代謝異常自体を診療をすることは出来るのですが、やはり成人を見慣れている内科の先生との連携が大切だと思っています。


また、最近全国に広がっているライソゾーム病の拡大新生児スクリーニングがあります。例えばファブリー病の場合に、異常が見つかると、その児のお母さんも症状がある場合があります。例えば、脳梗塞の症状があり(自覚がない場合もある)、お母さんの治療も必要になることもあります。そうなった場合のスムーズな成人診療科との医療の地域連携も重要になります。

患者会との繋がりはありますか

深い繋がりがあります。

患者会主催の勉強会に参加したり、研究班のフォーラムに患者会の皆さまを呼んだりもします。

新しい患者さんに、患者会を紹介したりもしています。患者会には、私たちの知らない生きた情報がたくさんあり、患者さんにとって関わるメリットが非常に大きいです。患者会主催のイベントでは、質問が尽きるまでお答えするようにしています。

また、患者さんのニーズが高い創薬などの情報を私の研究班の公開フォーラムで発信したりしています。

ライソゾーム病の方が生活をする上で注意をしなければいけないことはありますか


一般に骨の症状が強い方は激しい運動は避けたほうが良いです。

Fabry病の疼痛は、温度変化により症状が出ることがしばしばあります。
その場合、
例えば、お風呂の温度や入浴方法にも工夫が求められるかもしれません。

また、ムコ多糖症などに関しては、症状が進んでいる子の睡眠には特に注意し、
強いいびきや無呼吸などがある場合は耳鼻科の先生と連携することも重要です。
いずれにしてもよく主治医の先生と話し合いながら病気と付き合っていくことが大事だと思います。




〇略歴〇

1997年 秋田大学医学部 卒業

1997年 千葉大学医学部小児科 入局

1999年 千葉大小児科代謝グループ 所属

2005年 千葉県こども病院代謝科 医長

2006年 千葉大学大学院医学研究院小児病態学 博士課程修了

2006年 Melbourne Royal Children's Hospital, Murdoc Childrens Research Institute 客員研究員

2014年 千葉県こども病院代謝科 部長

2014年 Helmholtz Zentrum in Munich, Human Genetics 客員研究員

2018年 千葉県こども病院 遺伝診療センター センター長(代謝科部長と兼任)

2019年 順天堂大学医学部 難病の診断と治療研究センター 客員教授

2023年 順天堂大学大学院医学研究科 難治性疾患診断・治療学講座/小児科学講座 教授

〒113-8421 東京都文京区本郷2丁目1番1号
順天堂大学大学院医学研究科
難治性疾患診断・治療学講座/小児科学講座 教授

村山 圭  先生

インタビュー・作成
一般財団法人 日本患者支援財団 運営事務局