ライソゾーム病 その他の疾患
診断前・治療前のみなさんへ
診断されたみなさん治療中のみなさんへ

 

疾患情報
ライソゾーム病とは、細胞内の老廃物を分解する役割を果たすライソゾームに含まれる酵素が、生まれつき欠損している、あるいは機能が低下しているため、細胞内にさまざまな脂質や複合糖質が蓄積し、その結果肝臓や脾臓などの臓器の腫大、骨の変形や中枢神経の障害をきたす疾患群です。 これまでおよそ60種類の疾患が存在することがわかっていますが、大きく分けるとスフィンゴリピドーシス、ムコ多糖症、ムコリピドーシス、ライソゾーム膜転送異常症、タンパク分解酵素欠損症などがあります。スフィンゴリピドーシスにはゴーシェ病、ファブリー病などが含まれ、またムコ多糖症はⅠ型のハーラー症候群、Ⅱ型のハンター症候群、Ⅲ型のサンフィリッポ症候群などが知られています。この他のライソゾーム病として、スフィンゴリピドーシスには酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症、異染性白質ジストロフィーやGM1ガングリオドーシスがあります。さらにライソゾーム膜転送異常症にはシスチン症などがあります。

症状 

酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症

ニーマン・ピック病とも呼ばれる酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症では、スフィンゴミエリンが肝臓や脾臓、また脳や呼吸器に蓄積することから、次のような症状がみられます。

・肝臓や脾臓の腫大
・咳、息切れ
・哺乳力が弱い
・発達の遅れ
・貧血や血小板減少

症状

異染性白質ジストロフィー

アリルスルファターゼAという酵素が欠損することで、スルファチドやセラミドラクトシル硫酸などの糖脂質が、脳や末梢神経系、腎臓に蓄積することで、筋力低下、嚥下困難、手足の麻痺、けいれん、さらに知的障害や認知症などを認められるようになります。

GM1ガングリオドーシス

β-ガラクトシダーゼが欠損することで、GM1ガングリオシドやオリゴ糖、ケタラン硫酸などが脳をはじめ、全身の臓器に蓄積することで筋緊張の低下、発達の遅れ、音への過敏な反応、肝臓や脾臓の腫大、骨の異常などを認めるようになります。

発症の特徴

酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症

ニーマン・ピック病は、生後半年以内に肝臓や脾臓の腫大、哺乳力が弱い、四肢の筋力が弱い、また発達の遅れなどから気づかれる乳児内臓神経型、同じく肝臓や脾臓の腫大から気づかれるものの、発症年齢や重症度の個人差が大きい慢性内臓型、また両者の中間にある慢性内臓神経型があります。

異染性白質ジストロフィー

生後15か月から2歳くらいまでに発症する乳幼児型、3~10歳で発症する若年型、また13歳を過ぎて発症する成人型があります。乳児型は筋力が弱い、顔の表情が乏しい、言葉が出ないなどの症状から始まり、嚥下障害、下肢の筋緊張が強くて動かせない(痙性麻痺)、けいれんなどがみられ、徐々に運動や言語の機能が失われていきます。若年型は歩行障害、知的障害などから始まり、症状は進行します。成人型は、認知症の症状で発症します。

GM1ガングリオドーシス

生後3〜6か月で発症する乳児型、1歳前後で発症する若年型、そして成人型に分類されます。乳児型では発達の遅れ、筋緊張の低下、音への過敏な反応、けいれんなどがみられるようになります。若年型では乳児型に似た症状が認められますが、症状は重くありません。成人型では、歩行障害や言葉がうまく話せない構音障害などがみられ、筋緊張の亢進による異常運動(ジストニア)などもみられることがあります。乳児型は、多くが3歳頃までに亡くなってしまいます。

検査方法

酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症

血液や皮膚の細胞内の酸性スフィンゴミエリナーゼの活性の測定にて最終的な診断が行われます。その他にも血液検査で肝機能や貧血、血小板数などと共に、コレステロールの一種であるHDLを調べます。酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症では、HDL値が低くなる特徴があります。その他にも特に乳児内臓神経型では、眼底検査でチェリーレッドスポットと呼ばれる赤い斑点がみられます。

異染性白質ジストロフィー

血液や皮膚の細胞のアリルスルファターゼAの活性を測定することで、診断がなされます。尿中のスルファチドの蓄積、頭部MRIにて脳白質の著しい変性も診断に役立ちます。

GM1ガングリオドーシス

血液や皮膚の細胞におけるβ-ガラクトシダーゼの活性を測定することで診断されます。遺伝子を検査することで診断は確定されます。そのほか乳児型では眼底検査でチェリーレッドスポットと呼ばれる赤い斑点がみられます。

治療方法

酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症

蓄積したすスフィンゴミエリンを分解する酸性スフィンゴミエリナーゼを点滴する、酵素補充療法が中心となります。また骨髄移植を行うこともあります。

異染性白質ジストロフィー

残念ながら、現時点では症状を緩和させる治療しかできません。造血幹細胞移植が行われることもありますが、限定的です。

治療方法

早期発見の大切さ

ライソゾーム病の一種であるムコ多糖患症Ⅵ型では、5歳6か月と生後6週間から早期に治療(酵素補充療法)を開始した、兄妹の症例があります。

お兄さんは、2歳のとき言葉の遅れがみられていましたが、酵素補充療法を開始後、聴力の改善により言葉の遅れは全く認めず、精神運動発達は正常範囲で経過しています。また、妹さんも出生時にムコ多糖症Ⅵ型であることがわかり、生後6週間から治療を開始。治療開始後は、関節症状はほとんど認めず、聴力も正常範囲内を保てています。

ムコ多糖症Ⅵ型を含むライソゾーム病は、症状が出る前に診断をすることが非常に難しい病気です。しかし、早期発見、早期に治療を開始することで、今回のような長期の予後が改善された例もあります。また、現在では拡大スクリーニングの対象疾患となっており、実施している自治体も増えてきています。

出産の際はスクリーニングを受けたり、疑われる症状があった際は、早いタイミングで医療機関へ受診しましょう。

早期発見の大切さ

監修医:独立行政法人国立病院機構 岡山医療センター 小児科医長 古城真秀子 先生

診断されたみなさん、治療中のみなさんへ

ライソゾーム病広場では、医師のインタビューやコラムなど、患者さんの役立つ情報を発信していきます。

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