ポンペ病(Pompe病、糖原病II型)は、ライソゾーム病の一つで、酸性α-グルコシダーゼ(GAA)という酵素の働きが低下することで起こる、まれな遺伝性疾患です。
GAAは、細胞内のライソゾームでグリコーゲンを分解する働きを担っています。
ポンペ病では、この酵素が十分に働かないため、主に筋肉の細胞内にグリコーゲンが蓄積し、筋力低下や呼吸機能の低下などにつながります。
乳児期早期に発症する乳児型と、小児期から成人期まで幅広い時期に発症する遅発型があり、症状や進行の仕方には個人差があります。

ポンペ病の症状は、発症する時期や病型によって異なります。
乳児型では生後早期から筋力低下、哺乳不良、呼吸障害、心肥大などがみられることがあります。
一方、遅発型では小児期から成人期に、体幹や太ももなどの筋力低下、階段の上りにくさ、疲れやすさ、呼吸筋の筋力低下などをきっかけに病気が疑われる場合があります。
乳児型ポンペ病では、生後数か月以内など早い時期から筋力低下がみられることがあります。首がなかなか座らない、手足がだらんとして力が入りにくい、ミルクを飲む力が弱い、呼吸が苦しそうといった症状や、心肥大などが診断のきっかけになることがあります。
こうした症状だけでポンペ病と判断することはできませんが、乳児型では早期に進行することがあるため、気になる症状がある場合は小児科などの医療機関に相談し、必要に応じて専門的な検査につなげてもらうことが大切です。
遅発型ポンペ病は、小児期だけでなく成人になってから症状が現れることがあります。成人では、体幹や太ももなど身体の中心に近い筋肉の筋力低下、階段を上る・椅子から立ち上がるといった動作のしにくさ、疲れやすさなどがみられる場合があります。
また、呼吸に使う筋肉の力が低下することで、睡眠中の呼吸の問題、朝の頭痛、日中の眠気などが現れることもあります。症状がゆっくり進む場合には、診断まで時間がかかることもあります。
ポンペ病の経過や予後は、乳児型・遅発型といった病型、発症年齢、症状の程度、治療を開始する時期などによって異なり、一律に「寿命」を示すことはできません。
乳児型は治療を行わない場合に急速に進行することが知られていますが、現在は酵素補充療法などの治療が行われています。
遅発型では進行の程度に個人差があり、筋力や呼吸機能などを継続的に確認しながら治療・支援を行います。
個々の患者さんの見通しについては、病型や現在の状態によって異なるため、主治医やポンペ病を専門とする医師へ相談してください。

ポンペ病は、GAA遺伝子の変化によって酸性α-グルコシダーゼ(GAA)の働きが低下することで起こる遺伝性疾患で、常染色体劣性遺伝(常染色体潜性遺伝)の形式をとります。通常、患者さんは両親それぞれから病気に関係する遺伝子の変化を1つずつ受け継いで発症します。
両親がともに保因者の場合、1回の妊娠ごとに、子どもがポンペ病を発症する確率は25%、保因者となる確率は50%、病気に関係する遺伝子変化を受け継がない確率は25%です。発症に男女差はありません。
日本人では約10〜20万人に1人と推定されている希少な病気です。
2021年に報告された全国疫学調査では、日本のポンペ病患者数は124±25.8人と推計されています。
ポンペ病は、乳児期早期に発症する乳児型と、それ以降に発症する遅発型に大きく分けられます。遅発型は小児期から成人期まで発症時期に幅があり、成人型では診断されていない患者さんがいる可能性も指摘されています。
生後2か月から数が月以内に症状が現れ、急速に進行します。ミルクの飲みが悪い、体重が増えない、四肢の筋力が弱いなどから気づかれることが多く、心肥大、呼吸障害を伴い、治療しなければ1歳半までに多くの場合亡くなります。
生後1歳前後で発症する小児型と成人して発症する成人型があります。ゆっくりと進行するため、なかなか気づかれないこともありますが、発症年齢が低いほど、進行は早いと言われています。
主に運動能力の遅れ(歩行や階段を登ることが困難)、呼吸が苦しい、また進行する筋力低下などで気づかれます。最終的に、車椅子や人工呼吸器が必要となることもあります。
ポンペ病は、遺伝性疾患です。
筋力低下や呼吸機能の低下、乳児期の心肥大などからポンペ病が疑われる場合は、酸性α-グルコシダーゼ(GAA)の酵素活性を調べる検査や遺伝学的検査などを行い、診断につなげます。血液中のCKなどの値、心臓や呼吸機能の検査なども、症状や病型に応じて行われます。
ポンペ病の診断を目的とする検査は、主に次の2つ実施されています。

血液や皮膚組織から、GAA酵素の働きを調べます。
GAA酵素を作る遺伝子 変異の検査
なおその他にも症状に応じて心臓の超音波検査、呼吸機能の検査なども行われます。
ポンペ病は、一部の地域や医療機関で「拡大新生児スクリーニング」の対象となっています。スクリーニングで陽性や要精査となった場合でも、それだけでポンペ病の診断が確定するわけではありません。
病気の可能性が示された場合は、専門医療機関でGAA酵素活性の測定や遺伝学的検査などの精密検査を受け、診断を確認します。実施している疾患や費用、検査体制は地域・医療機関によって異なります。
ポンペ病では、病気の進行を抑え、筋力や呼吸機能などをできるだけ維持することを目的として治療を行います。
疾患に対する治療として酵素補充療法が行われるほか、患者さんの状態に応じてリハビリテーション、呼吸管理、栄養管理などを組み合わせます。
不足している酵素であるGAAを補充し、病気の進行を抑える治療法です。グリコーゲンが蓄積しないように、点滴でGAA酵素を補います。なお点滴は、2週間に1回の頻度で行います。
また低下した筋力を高め、運動能力を維持、回復させるためのリハビリテーション、呼吸機能を高めるための運動、不足する栄養を補充するために、食べる力が弱っている場合は流動食を管を通して投与することもあります。
参考文献
ポンペ病では、病型によって症状の現れ方や進行の速さが異なります。特に乳児型は生後早い時期から症状が現れ、急速に進行することがあるため、早期に診断し、適切な治療につなげることが重要です。
一方、遅発型では筋力低下や疲れやすさ、呼吸機能の低下などがゆっくり進み、ほかの筋疾患などとの区別が難しい場合があります。気になる症状が続く場合や家族歴がある場合には医療機関へ相談し、必要に応じて専門的な検査を受けることが大切です。
また、一部の地域・医療機関では、ポンペ病を対象とした拡大新生児スクリーニングが行われています。早い段階で病気の可能性を見つけ、精密検査や専門医療へつなぐための取り組みです。
治療を開始する時期による違いを考えるうえで参考となる、同じライソゾーム病の兄妹の症例があります。
お兄さんは、2歳のとき言葉の遅れがみられていましたが、酵素補充療法を開始後、聴力の改善により言葉の遅れは全く認めず、精神運動発達は正常範囲で経過しています。
また、妹さんも出生時にムコ多糖症Ⅵ型であることがわかり、生後6週間から治療を開始。
治療開始後は、関節症状はほとんど認めず、聴力も正常範囲内を保てています。
ムコ多糖症Ⅵ型を含むライソゾーム病は、症状が出る前に診断をすることが非常に難しい病気です。しかし、早期発見、早期に治療を開始することで、今回のような長期の予後が改善された例もあります。また、現在では拡大スクリーニングの対象疾患となっており、実施している自治体も増えてきています。
出産の際はスクリーニングを受けたり、疑われる症状があった際は、早いタイミングで医療機関へ受診しましょう。

監修医:名古屋セントラル病院ライソゾーム病センター長、主任医長(科長) 坪井一哉 先生
ポンペ病に関する情報を、継続して受け取りたい方へ
無料会員登録をすると、ポンペ病を含むライソゾーム病の新着情報、新薬・治療に関する情報、医師インタビュー、医療費助成・社会保障制度など、患者さん・ご家族に役立つ情報を確認しやすくなります。